概要
固定レイアウトの出版物は、HTMLドキュメントを使ってテキストと画像を組み合わせて作成できます。各ドキュメントには、コンテンツが配置されるキャンバスである固定の高さと幅が割り当てられます。CSS を使用して、この表示領域内でコンテンツ要素を絶対的に配置したり、寸法に合う画像をページに埋め込んだりします。
固定レイアウトにHTMLを使用する利点は、各ページのテキストコンテンツが支援技術で利用できる点です。画像の場合は、HTMLにもともとあるアクセシビリティ技術である代替テキストや拡張説明が利用できます。
EPUB
Web上で固定レイアウトを作成することは可能ですが、ブラウザでは自然にサポートされません。ブラウザはデザインどおりにページをレンダリングしますが、レンダリングをサポートするための最適化は行いません。
出版におけるこの問題を解決するために、EPUB3では、リーディングシステムが各固定レイアウトページに適切な表示領域と特性を作成できるように支援するメタデータが導入されました。
EPUB出版物は、固定レイアウトのXHTMLページで完全に構成される場合も、リフロー型の出版物内にいくつかの固定レイアウトページが散在しているだけの場合もあります(たとえば、地図は、リフロー型の出版物に固定レイアウトを用いて組み込まれる場合があります)。
SVGの固定レイアウトページとXHTMLの固定レイアウトページ、あるいは、画像を直接EPUBの読み取り順序で並べて混在できます。
注記
固定レイアウトの出版物の作成方法の詳細については、固定レイアウトの概要ページを参照してください。
アクセシビリティ
リフロー型の出版物のアクセシビリティ対応をするのと同じ手法を、アクセシビリティを最大限に高めた固定レイアウトのHTMLページの作成にも利用できます。主な手法としては以下のものがあります。
- 論理的な読み順の確保 — コンテンツの順序は、ユーザーがページ上で論理的に読む順序と一致しなければなりません。画面上の位置を調整するには、CSSを使用します。
- コンテンツを複数のページに分割しない — ページスプレッドをアクセシビリティ対応にする方法はいくつかありますが、サイドバーなどの補足情報が複数のページに分割されると、論理的な読み順を維持するのが難しくなります。
- 構造マークアップの使用 — コンテンツが意味のある形でマークアップされ、支援技術でナビゲートできるようにします。たとえば、見出しや表はマークアップを使用します。スタイル設定でそのように見えるようにはしないでください。
- 意味のある画像をすべて説明する — 出版物を理解するために必要な情報を含むすべての画像は、代替テキストや拡張説明を使用して説明しなければなりません。背景画像は多くの場合、キャラクターのやり取りのコンテキストを提供するため、シーン設定がないと会話が意味をなさない場合があります。
- テキストの画像を使わない — 背景画像の上にテキストを重ねると、支援技術がアクセスしやすくなります。
- テキストのコントラストの確保 — 固定レイアウトでは画像の上にテキストを重ねることが多いため、テキストが背景から視覚的に区別できるようにすることが重要です。
上記のような手法に従ったとしても、リーディングシステムではしばしばコンテンツ製作者によるレイアウトが維持されるため、ユーザーによる文書の見た目の変更ができず(たとえば、フォントサイズを大きくしたり、テキストの色を変更したりする機能が無効になるなど)、固定レイアウトによってアクセシビリティが制限される問題が生じます。その結果、固定レイアウトの出版物をアクセシビリティ対応にするために最大限の努力を払っても、一部のユーザーには読めないままになる可能性があります。